【日本政策金融公庫】飲食店による起業の事例と成功の秘訣を解説
こんにちは。
税理士、大山俊郎です。
最近、飲食店の開業を希望される方からの問い合わせを多くいただきます。
当たり前のことですが、飲食店の開業のためには、それなりの開業資金の準備が必要です。
けれども、自分でちゃんとお金を準備できるかどうか、不安になる方も多いはずです。
そのような方に向けて、今回は日本政策金融公庫の創業融資に成功した飲食店の事例を、2件紹介いたします。
この記事を読んでいただくことで、飲食店で起業するあなたも、日本政策金融公庫の融資を受けるコツを掴むことができるでしょう。
それでは、実際の事例を見ていきます。
日本政策金融公庫を利用した飲食店の事例①:大阪中心部にある焼肉屋A店
1つ目の事例は、大阪の中心部で焼肉屋を経営されているA店です。
A店は先日、中小企業経営力強化資金を利用し、2,000万円の融資を受けることに成功しました。
ご存知の方もいらっしゃると思いますが、日本政策金融公庫の創業融資を受けるには、ある程度の自己資金を準備しておく必要があります。
なぜならば、自己資金があったほうが資金計画が柔軟に立てやすくなるし、自己資金額が要件になっている制度もあるからです。
無担保・無保証で融資を受けられる新創業融資制度を利用するには、借入金額の10分の1の自己資金を準備することが要件となっています。
けれども、A店は自己資金が借入金の20分の1程度という少ない金額にも関わらず、創業融資を受けることができました。
実は、こちらのA店は、すでに売上3,000万円を上げており、先日経営者が世代交代をしたばかりです。
ご存知の方が少ないと思いますが、ゼロからの新規開業でなくとも、A店のように既存の飲食店で世代交代をするタイミングでも、日本政策金融公庫の創業融資を利用できます。
なぜならば、事業を引き継いだ経営者にとって、その事業はまったく新しく始めるものだからです。
A店が日本政策金融公庫の創業融資を受けられたのは、これまでに3,000万円という売上の実績を上げてきたからに他なりません。
日本政策金融公庫も、政府系とはいえ金融機関の1つですから、融資先の信用力をチェックします。
A店の場合には、すでに売上を上げた実績のあることが、日本政策金融機関公庫の評価のポイントでした。
日本政策金融公庫を利用した飲食店の事例②:これから飲食店を新規開業するB氏
2つ目の事例は、ゼロから飲食店を起業するB氏です。
B氏の創業融資は、現在進行の段階ですが、今のところ1,000万円の融資を受けられる見込みです。
今回1,000万円もの創業融資が受けられるに至った要因は、B氏のこれまでの企業での豊富なマネジメント経験によります。
そこで、B氏がどんな人物なのかを、簡単に紹介します。
B氏は、大手の企業で15年間管理職を経験してきました。管理職となると、現場でただひたすら料理を作るだけでは済まないです。
経理として会社のお金の管理を一手に任されることもあれば、新しく入ってくる社員の教育も引き受けることもあるでしょう。料理を作るだけでなく、会社を回していくのに必要なマネジメント力が求められます。
日本政策金融公庫の創業融資においては、創業に至るまでの経験が重視されます。新創業融資制度においては、「雇用創出等の要件」の中で、その旨がはっきりと示されています。
現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方で、次のいずれかに該当する方
(1)現在の企業に継続して6年以上お勤めの方
(2)現在の企業と同じ業種に通算して6年以上お勤めの方
引用:日本政策金融公庫
B氏の場合には、料理人としてのスキルがあるだけでなく、15年間という大手企業の中でのマネジメントの経験があり、経営者として事業を運営していくだけのスキルがあるだろうとみなされました。
日本政策金融公庫の攻略ポイント:飲食店の成功事例から学ぶ
ここまでの話のまとめとして、飲食店において日本政策金融公庫で創業融資を通すためのポイントをまとめていきます。
公庫のHPに記載されている創業融資の要件には書かれていないことなので、より深くイメージができると思います。
日本政策金融公庫の攻略ポイント①:飲食店での実務経験が豊富かどうか
飲食店での実務経験は、飲食店で起業する上で必要不可欠です。
A店の新しい経営者は、世代交代までA店での実績をコツコツと積んできました。
B氏も15年間、大手企業で経験を積んできました。
飲食店での実務経験を具体的に述べると、
・お客様のニーズにあった料理を提供できること
・その料理を提供するために必要な食材を、安定して調達できること
・お客様との心を通わせた接客ができること
など色々あります。
飲食店の現場のことを知ることなしに、飲食店での起業は難しいですね。
日本政策金融公庫の攻略ポイント②:飲食店で継続的に売上を上げられるかどうか
日本政策金融公庫に関わらず、金融機関が見ているのは、融資先にちゃんと返済能力があって、確実に借金を返してくれるかどうかです。
言ってしまえば、A店のように過去の売上実績があるならば、それが一番の信用力になります。
そうは言っても、B氏のようにこれから起業する人たちに過去の実績を求めるのは、残酷な話です。
もし売上の実績が無いならば、創業計画をしっかりと立てて、売上を立てるまでのストーリーを、説得力をもって日本政策金融公庫の担当者にプレゼンできるかどうかがポイントになってきます。
A店、B氏の場合は、私大山が融資に至るまでサポートをさせていただきました。
もしあなたが、お一人で日本政策金融公庫の利用に不安があるならば、私のような創業融資に詳しい税理士にサポートをお願いするのも、1つの手段と思います。
日本政策金融公庫の攻略ポイント③:飲食店の経営者としての資質があるか
先ほども申し上げましたが、飲食店で開業するには、単にお客様に対して料理を提供できればよい訳ではありません。
個人事業主であれ法人であれ、あなたが飲食店という一事業を継続的に運営するならば、組織・人事、マーケティング、経理、税務など、会社経営全般のことを一通り把握しておく必要はあります。
A店の場合は、言うまでもなく焼肉屋を代々経営している創業家一族です。
B氏はもともと大手企業出身の会社員ですが、15年間にも及ぶ豊富なマネジメント経験を持っています。
もしあなたが今までに、会社経営や組織マネジメントの経験をお持ちでないならば、会社経営に詳しい税理士を顧問にしたり、会社経営に精通した人材を役員に迎えるなど、自分以外の人材を活用するという方法もありかと思います。
【日本政策金融公庫】飲食店による起業の成功のチェックリスト
さて、ここまで日本政策金融公庫を利用した飲食店の事例と、融資を受けるためのポイントを解説して来ましたが、いかがでしょうか?
融資を受けるのが、意外と大変そうだと感じる人も多いのではないでしょうか。
会社を経営することは、本当に大変なことです。しかも、10年、20年と事業を継続するとなると尚更です。
そのことも踏まえた上で、飲食店で起業するのかどうか、日本政策金融公庫を利用するかどうかを決定してもらいたいと思います。
日本政策金融公庫の創業融資を通すために、最低限押さえておくべきポイントを、以下の通りチェックリストとしてまとめました。
事業の具体性が増せば増すほど、日本政策金融公庫を説得しやすくなります。そのためのヒントとして、上記のチェックリストを活用してもらいたいと思います。
個別の内容を、簡単に説明していきますね。
自己資金が準備できているか?
もし新創業融資制度を利用されるならば、借入金額の10分の1以上の自己資金を準備しておく必要があります。
それ以外の創業融資で自己資金を準備しておく必要がないかというと、そんなことはありません。
日本政策金融公庫総合研究所の「2016年新規開業実態調査」によると、創業資金の調達先として、自己資金の占める割合は22%となっています。
借入金に依存しすぎるよりも、自己資金があった方が、不測の事態があった場合を見越して柔軟な資金計画が立てられるということですね。
過去に金融ブラックの経歴はないか?
金融ブラックとは、お金関連でのトラブル(返済の遅れや自己破産など)があり、信用を失った状態です。
こうした金融ブラックの経歴があると、信用情報機関にその情報が登録され、最低でも5年間は記録として残ります。
正直な話、金融ブラックの方が日本政策金融公庫から融資を受けるのは不可能です。
しっかりと働いて信用力を回復してから、改めて起業することを検討した方がよいでしょう。
出店の場所について
出店の場所も、慎重に検討した方がよいと思います。
なぜならば、店舗周辺の通行状況に応じて、人が集まるかどうかも決まるからです。
また、出店場所の周辺の人々の特性もしっかりと把握しておくべきでしょう。極端な話、サラリーマンの利用が多い新橋周辺で、オーガニック野菜専門の飲食店を出店するようなものです。
好条件の立地であったとしても、家賃を継続的に支払えるのかどうかもしっかりと考えたいところです。
店舗への集客の手段はあるか?
出店しただけでお客様は集まるほど、飲食店の経営は甘くはありません。
あなた自身が、積極的に集客の手段を講じる必要があります。
近年は、Webマーケティングを活用する飲食店も増えており、自分の店のWebサイトがあるかどうかによって売上が左右されることもあります。
もしサイト制作を外注する場合には、そのためのコストも考える必要があります。
従業員の雇用について
もし従業員を雇用されるならば、毎月給料を支払う必要がありますよね?
従業員に対して支払う給料も含めて、しっかりと資金計画を考えられるといいですね。
飲食店でのマネジメント経験について
飲食店での現場経験だけでなく、会社経営をする上でマネジメント経験があるのが望ましいですね。
一応、新創業融資制度では「6年以上」という要件となっていますが、経験が長いほど、より説得力が高まります。
もしご自身にマネジメント経験がなければ、企業経営に詳しい税理士と顧問契約を結ぶことも1つの手段です。
どの税理士と、どれくらいの期間・料金で顧問契約を結ぶかも創業計画の中に盛り込めると、日本政策金融公庫の審査でプラスの要素になります。
経営のプロである税理士と協力体制にあること自体が、審査においてプラスに働きます。
特に、あなたが無担保・無保証の中小企業経営力強化資金を利用するならば、マネジメント経験の有無にかかわらず、税理士などの認定支援機関による支援が必須です。
中小企業経営力強化資金を利用する場合、事業の進捗状況を年に2回、あなた自身で日本政策金融公庫に報告しなければなりません。
開業当初のバタバタしている状況の中で、事業の進捗状況を冷静に考えることができますか?
計画策定の段階で、飲食店の現場のことだけでなく、経営のこともしっかり考えておきたいところですね。
購入する物品(テーブル・イス・調理器具など)の予算は明確か?
購入する物品も明確にして、創業計画の中に反映しておきましょう。
売上を上げるまでのプロセスが明確であるほど、日本政策金融公庫への説得材料となり、融資も通りやすくなります。
何よりも大事なのは、日本政策金融公庫の融資を通した後に、あなたがしっかりと事業を継続していくことです。
細かいポイントと思われるかもしれませんが、手を抜かないでいただきたいです。
まとめ:飲食店で日本政策金融公庫を利用するならば、事業計画を具体化すべし
今回ご紹介したA店・B氏ともに、継続的に売上を上げる見込みがあるからこそ、融資を受けることができました。
あなたがこれから飲食店の開業に日本政策金融公庫の創業融資を利用されるならば、事業内容を具体的にして、日本政策金融公庫の担当者に説得力を持ってプレゼンする必要があります。
今回の飲食店の事例と、上述のチェックリストを参考にして、ご自身の飲食店の事業計画をブラッシュアップしてみてください。
税理士、大山俊郎でした。
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