日本政策金融公庫からの創業融資を「低金利で」利用する方法とは?
税理士、大山俊郎です。
あなたがこれから起業のためのお金を必要とするならば、第一に日本政策金融公庫の創業融資をおすすめします。なぜならば、日本政策金融公庫は中小企業や起業家向けの融資が専門であり、融資の要件が他の金融機関よりも緩めだからです。そうはいっても、借りたお金は将来的に返さなければいけないもの。
そこで気になるのは金利です。
日本政策金融公庫には様々な創業融資があり、どのような融資を受けるかで金利も変わります。できれば金利は低く抑えたいと思いませんか?そこでこの記事では、日本政策金融公庫の創業融資を低金利で利用する方法を解説いたします。
あなたの創業融資に関する不安が、少しでも解消できればと思います。
日本政策金融公庫の創業融資を低金利で利用する方法は、5つに分けられます。
①金利の低い創業融資を利用する
②担保・保証人をつける
③特別利率の適用を受ける
④経営革新計画などの認定を受ける
⑤中小企業の会計を適用する(中小企業経営力強化資金のみ)
具体的にこれら5つを解説しましょう。
①金利の低い創業融資を利用する
日本政策金融公庫の創業融資は、主に5つあります。
・新規開業資金
・女性、若者/シニア起業家資金
・新創業融資制度
・挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)
・中小企業経営力強化資金
創業融資によって利率も変わってきます。
あなたがどんな業種で起業するのか、自己資金はあるのか、事業に技術的な優位性があるのかなど、要件によってどの創業融資を受けられるのかも変わってきます。これらの中では、「女性、若者/シニア起業家資金」が比較的利率が低いです。金利が一番低い創業融資を受けられるわけではありません。
しかし、創業融資ごとの金利、融資の要件を把握しておき、自分ならばこの創業融資を利用できるのではないか、という当たりを付けておくだけでも違いますよね?
新規開業資金 女性、若者/シニア起業家資金 新創業融資制度 挑戦支援資本強化特例制度
(資本性ローン) 中小企業
経営力強化資金
利率 1.16〜2.25%
※無担保・無保証で2.26〜2.75% 0.76〜1.85%
※無担保・無保証で1.86〜2.35% 各融資制度に基づく 直近の業績によって変動 2.06〜2.35%
②担保・保証人をつける
日本政策金融公庫の特徴の1つとして、無担保・無保証で融資を受けられることがあります。しかし、担保を提供した方が利率を低く抑えることができます。日本政策金融公庫の利率を比較してみましょう。表の一番左にある「基準利率」をご覧になってください。担保を不要とする場合の基準利率は、1.81〜2.30%です。
引用:日本政策金融公庫-金利情報
一方、担保を提供する場合の基準利率は1.16〜2.25%ですから、担保を提供する方が利率が低いことが分かります。
引用:日本政策金融公庫-金利情報
無担保・無保証は、借りる側からすればリスクが低いですが、日本政策金融公庫にとってはリスクでしかありません。逆に、借りる側が担保を提供するのはリスクとなるので、その分金利も低くなるのです。そうは言っても、担保を提供するのはあなたにとっては非常にリスクのあることです。保証というのは連帯保証人ことを指します。連帯保証人とは、あなたが仮に事業に失敗してお金を返せなくなった時、あなたの代わりに借りたお金を返済してくれる人のことです。連帯保証人など、進んで引き受けたい人などいないのが普通です。連帯保証人を立てること自体がリスクですが、そもそも連帯保証人になってくれる人を探すことも困難です。
③特別利率の適用を受ける
日本政策金融公庫の創業融資の利率には、「基準利率」と「特別利率」の2パターンがあります。特別利率とは、ある一定の要件を満たすことで、基準利率よりも低い利率で融資を受けられる仕組みのことです。特別利率の適用要件は、創業融資によって異なります。
例えば、あなたが新規開業資金を担保の提供なしに融資を受けたとします。その場合の利率は、基準利率である1.81〜2.30%となります。もしあなたが、産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援事業を受けて運転資金・設備資金を借りる場合には、特別利率Aが適用されます。そのときの利率は、1.41〜1.90%と基準利率よりも低金利になります。また、あなたの事業に対し、技術・ノウハウ等の新規性がある場合には、特別利率Bが適用されます(運転資金・設備資金に限られますが)。その場合の利率は、1.16〜1.65%となり、特別利率Aよりも低い利率となります。
④経営革新計画などの認定を受ける
あなたの事業が、経営革新などに該当し、策定した計画が認定されることで、基準利率よりも低い利率で融資を受けられるようになります。対象となる事業活動には、以下のようなものがあります。
・経営革新
・異分野の中小企業同士の連携による新商品・新サービスの開発等(新連携)
・地域資源を活用した新商品・新サービスの開発等
・中小企業者と農林漁業者による連携(農商工連携)
経営革新は、新商品や新サービスの開発・提供などを通して、一定以上の付加価値額の成長が見込めることが要件となります。経営革新計画を策定したら、都道府県または国から認定を受ける必要があります。もし経営革新計画の認定を受けられれば、基準利率よりも0.65%利率が低くなります。
参考資料:中小企業施策利用ガイドブック
⑤中小企業の会計を適用する(中小企業経営力強化資金のみ)
引用:日本政策金融公庫-金利情報
中小企業経営力強化資金を利用する場合には、特別利率Sが適用されます。特別利率Sの利率は、2.06〜2.35%です。特別利率Sからさらに金利を0.1%だけ低くする方法があります。それは、「中小企業の会計」の適用を受けることです。「中小企業の会計」とは、中小企業会計要領に基づいて日比の帳簿付けや決算書類の作成を行うことです。起業をしたてで経理もいないし、決算書を作るなどできるわけがないと、お嘆きになるかもしれません。そんなあなたのために存在するのが、認定支援機関です。中小企業経営力強化資金を利用するには、認定支援機関によるサポートが要件となります。認定支援機関は、事業計画の策定を支援してくれるだけでなく、中小企業会計の適用まで支援してくれます。認定支援機関は、会計や税務の専門家なので、安心してお任せできます。
参考資料:中小企業庁-中小企業の会計に関する基本要領
まとめ
日本政策金融公庫の創業融資を低金利で利用する方法は5つあります。
①金利の低い創業融資を利用する
②担保・保証人をつける
③特別利率の適用を受ける
④経営革新計画などの認定を受ける
⑤中小企業の会計を適用する(中小企業経営力強化資金のみ)
起業家であるあなたにとって、担保・保証人をつけることはリスクが高く、現実的とは言えません。あなたがどの創業融資を利用できるのか、特別利率の適用を受けられるのか、中小企業の会計をどう定着させればよいのか、まだ分からない点はたくさんあると思います。もし創業融資を受けるにあたり不安があるならば、ぜひ当事務所を一度訪ねてみてください。
参考資料:資金調達マニュアル-日本政策金融公庫の金利を低金利に!【特利】とはなんのこと?
税理士、大山俊郎でした。
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