日本政策金融公庫の創業融資まとめ
税理士、大山俊郎です。
日本政策金融公庫の創業融資をご存知でしょうか?
会社としての実績が無い起業家でも、公庫ならば融資を受けられる可能性は充分にあります。
しかし、公庫のホームページを見て、どの創業融資を活用すればよいのか、一目で分かりますか?
ちゃんと分かる人の方が少ないと思います。
そこで、この記事では、日本政策金融公庫の各種創業融資をご紹介します。
この記事を読んでいただければ、創業融資の全体像が理解できるでしょう。
そうすれば、あなたがどの制度を利用すればよいのか、イメージが湧いてくると思います。
それでは、具体的に見ていきましょう。
日本政策金融公庫の創業融資
起業家であるあなたが利用できる公庫の創業融資は、以下の5つです。
・新規開業資金
・女性、若者/シニア起業家資金
・新創業融資制度
・挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)
・中小企業経営力強化資金
名前を挙げただけですと、まだイメージは湧きませんよね?
各創業融資の詳細を、これから解説していきます。
日本政策金融公庫の創業融資その1:新規開業資金
7,200万円を限度額として融資を受けられる制度です。
事業を始めた方で、事業開始から概ね7年以内の方ならば融資の対象となります。
もしあなたが起業するにあたり、今までやってきた仕事の経験を活かすならば、
新規開業資金を利用することをおすすめします。
その理由は、新規開業資金の以下の2つの要件を見ていただくと分かります。
- 1.現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方で、次のいずれかに該当する方
・現在お勤めの企業に継続して6年以上お勤めの方
- ・現在お勤めの企業と同じ業種に通算して6年以上お勤めの方
- 2.大学等で習得した技能等と密接に関連した職種に継続して2年以上お勤めの方で、その職種と密接に関連した業種の事業を始める方
上記の要件を見ていただければお分かりのように、あなたの会社員での経験を活かすにはもってこいの融資制度なのです。
そうは言っても、通算で6年以上の勤務経験が必要ですから、高校・大学を卒業したての若者にとっては利用しづらい制度かもしれません。
あなたの会社員時代の勤務年数が短いならば、後述する女性、若者/シニア起業家資金を活用した方がよいでしょう。
あなたがもう1つ気になるのが、「金利がいくらか」ということではないでしょうか?
新規開業資金の場合には、基本的には「基準利率」というものが適用されます。
その場合の金利は、1.16〜2.25%となります。
一方、新創業融資制度を利用されるならば、金利は2.26〜2.75%と高くなりますが、無担保・無保証で融資が受けられるというメリットあります。
日本政策金融公庫の創業融資その2:女性、若者/シニア起業家資金
以下のいずれかの方であって、新たに事業を始める方や事業開始からおおむね7年以内の方が活用できます。
・女性
・35歳未満の方(若者)
・55歳以上の方(シニア)
融資限度額は、新規開業資金と同じで7,200万円です。
この情報だけだと、新規開業資金とどちらを利用すれば良いのか、分かりませんよね?
ですが、もしあなたが女性、若者、シニアに該当するならば、新規開業資金よりも女性、若者/シニア起業家資金を利用することをおすすめします。
なぜならば、以下の2つの点で、こちらの制度の方が新規開業資金よりも有利だからです。
①金利が比較的低い
②会社員時代の業種に縛られない
まずは、①の金利についてです。
女性、若者/シニア起業家資金の場合、「基準利率」よりも金利が低い「特別利率A」が適用されます。
特別利率Aによる金利は、0.76〜1.85%ですから、新規開業資金(1.16〜2.25%)よりも低いことがお分かりでしょう。
また、こちらの制度も、新創業融資制度を合わせて利用できます。
新創業融資制度を利用すれば、金利は高くなりますが(1.86〜2.35%)、無担保・無保証で融資を受けられるようになります。
次に、②についてです。
女性、若者/シニア起業家資金には、新規開業資金のような業種の要件がありません。
ですから、会社での勤続経験が6年未満だから融資を受けられないなんてことはありません。
また、会社員時代と全く異なる業種であったとしても融資を受けることができます。
女性、若者、シニアに該当する方は、こちらの制度を活用していただくとよいですね。
日本政策金融公庫の創業融資その3:新創業融資制度
新規開業資金や女性、若者/シニア起業家資金を利用する方が、3,000万円を限度として、無担保・無保証で融資を受けられる特例制度です。
当制度を利用できるのは、税務申告を2期終えていない方だけなので注意が必要です。
勘違いされる方が多いのですが、新創業融資制度は単独で利用できるものでなく、上記のような融資制度と組み合わせて利用するものです。
新創業融資制度を受けるのに一番ネックになるのが、自己資金の要件です。
創業に必要な資金総額の10分の1以上の自己資金を持っていることが、自己資金の要件です。
例えば、1,000万円の融資を受けたいならば、自己資金として100万円以上を用意しておかなければなりません。
日本政策金融公庫の創業融資その4:挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)
もしあなたが製品開発を行うベンチャー企業などを立ち上げるならば、こちらの挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)を利用するのがよいかもしれません。
製品開発には、初めにまとまった開発資金が必要ですが、開発から売上が立つまでのタイムラグがあります。
通常の融資制度ならば、借り入れてからすぐに返済がスタートしますが、売上が立っていないのに返済もしようがないですよね。
そのような起業家のために、資本性ローンは、元本の返済を5年先からスタートできる特例制度です。
元本の返済開始時期は、5年以上15年以内の範囲で設定でき、それまでは利息のみの支払いでOKです。
当制度を利用するには、技術・ノウハウに新規性が見られるなどの要件を満たす必要があるので、誰しもが受けられる制度ではありません。
もしあなたが、新規性のある製品を開発されるならば、資本制ローンを活用されるとよいですね。
日本政策金融公庫の創業融資その5:中小企業経営力強化資金
認定支援機関による指導、助言を受けて事業を行う方が、7,200万円を限度として融資を受けられる制度です。
しかも、新創業融資制度と同じく無担保・無保証です。
認定支援機関とは、あなたのような起業家や中小企業などの経営サポートを行う専門家です。
税理士、公認会計士、中小企業診断士などが登録していることが多いです。
同じ無担保・無保証の融資制度ということで、新創業融資制度と比較されることが多いです。
一体どちらの融資制度を活用するのがよいのでしょうか?
もしあなたが認定支援機関のサポートを受けている、またはこれから受けたいとお考えならば、中小企業経営強化資金を利用するのがよいと思います。
理由は二つあります。
一つ目は、新創業融資制度よりも金利が低くなることです。
融資限度額が2,000万円以内ならば、「特別利率S」というものが適用され、2.06〜2.35%となります。
二つ目の理由は、認定支援機関のサポートを受けた方が、受けないよりも融資を受けられる可能性が高くなることです。
なぜならば、認定支援機関のサポートを受けること自体が、公庫への信用力をあげることにつながっているからです。
公庫に限らず、融資を受けられるか否かは信用力の大きさにかかってきます。
そのような意味で、あなたが創業融資を真剣に考えているならば、認定支援機関のサポートを受けるのも1つの手段です。
まとめ:日本政策金融公庫。どの創業融資を利用すればよい?
各創業融資の解説をしてきましたが、少しはイメージが湧いてきたでしょうか?
あなたが気になるのは、「結局自分はがどの創業融資を利用すればよいの?」ということですよね。
あなたがどの創業融資を利用するかは、以下の要素で変わってきます。
・どのような業種で起業するのか?
・どれくらい資金が必要か?
・自己資金がどれくらいあるか?
・担保・保証人を立てられるか?
各創業融資の概要を、以下の通り表でまとめました。
新規開業資金 |
女性、若者/シニア起業家資金 |
新創業融資制度 |
挑戦支援資本強化特例制度 (資本性ローン) |
中小企業 経営力強化資金 |
|
どんな人におすすか? |
会社員時代の経験を活かして起業したい方 |
女性、若者、シニアで起業家志望の方 |
左の2つの融資を無担保・無保証で受けたい方 |
製品開発を一から手がけたい方 |
認定支援機関のサポートを受ける方 |
融資限度額 |
7,200万円 |
7,200万円 |
3,000万円 |
4,000万円 |
7,200万円 |
金利 |
1.16〜2.25% ※無担保・無保証で2.26〜2.75% |
0.76〜1.85% ※無担保・無保証で1.86〜2.35% |
各融資制度に基づく |
直近の業績によって変動 |
2.06〜2.35% |
無担保・無保証 |
× |
× |
◯ |
◯ |
◯ |
弊所は認定支援機関として、これまでに多くの起業家の創業融資のサポートを行ってきました。
あなたが本気で起業をお考えならば、ぜひ一声おかけください。
本気の起業家を全力でサポートさせていただきます。
税理士、大山俊郎でした。
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