日本政策金融公庫の審査をクリアしたのでその結果を報告します【税理士が解説】
税理士、大山俊郎です。
ある起業家さんからのインタビューにもとづいて、日本政策金融公庫の融資審査をクリアするまでの実際のお話をまとめてみました。
日本政策金融公庫の審査の具体的なイメージをつかんでいただければと思います。
【融資してもらう金融機関を決定するまで】
私は、起業する前は会社員でした。
学習塾で起業することを決め、会社を退職しました。その際、事業のターゲットを大まかに決めていましたが、物件選び、仕入先、内装関係など不明瞭な部分が多々ありました。
まずは開業資金の見直しから行いました。起業するためにどれくらいの費用がかかるものなのかは計算済みですが、今の自分の自己資金、自分と妻の預金や資産、自分と妻の両親などからの資金援助がどれくらい見込めるかなど洗い直しました。そうすると、開業資金がどれくらい不足するものかはだいたい見えてきますので今度は金融機関などからの創業融資で資金を調達することを検討しました。
その場合、なるだけ金利を低く抑えたいので選択肢の1つとして日本政策金融公庫を利用するということです。日本政策金融公庫は政府系の金融機関ということあって金利はとても低くなっていて、事業をする上では是非検討したい金融機関です。そしてもう1つは市町村の創業融資制度を利用し近隣の金融機関から資金を調達するというものです。こちらも公共団体の制度を利用してのものなので金利はかなり低くなっています。開業にあたっては、この2つのどちらかを利用するべきであると考えました。
その中で私は日本政策金融公庫をメインにと考えました。理由としてはどちらも無担保保証人無しで金利も大きな差はないものの若干金利が低かったことと一番大きかったのは日本政策公庫の融資は概ね自己資金の2倍まででしたが市の制度融資の場合は自己資金と同等程度であったため、手持ちの自己資金から市の制度の場合は不足する可能性があったためであるというのが一番の理由でした。
両方を同時にするということも不可能ではないでしょうが素人がそれを実行するにはあまりにもハードルが高そうであったため、とりあえず日本政策金融公庫に絞って融資実行を目指すこととしました。
【日本政策金融公庫 審査へ申込みの準備】
さて、そこからはまた本業との平行作業になりますが、今度は店舗の物件を確定させなければなりません。どこで営業するのかが決まらない限り融資もなにも進みません。敷金や礼金、家賃を踏まえ、物件確定に向け調査を継続させます。そして、物件が確定すればひとまず物件契約をすませます。これで融資に向け、本格稼働できます。
【日本政策金融公庫 審査クリアに向けての創業計画書の作成】
まずは、創業計画書を作成することとします。この創業計画書の完成度が融資実行の成否に大きく影響されます。もし、融資が実行されなければ、日本政策金融公庫に審査を再度申し込むためには最低でも半年後まで待たなければなりません。また、希望額から減額された場合、その減額度合いによってはいきなり資金ショートとなります。その時点からの市の制度融資への変更の場合、時間もかかりますし、そこでも融資されなければ事業開始そのものが不可になる可能性もあるため最重要ポイントとなってきます。
まずは日本政策金融公庫のHPから創業計画書のエクセルがあるのでそちらをダウンロードし記入していきます。①創業の動機、②経営者の略歴、③取り扱い商品・サービス
④取引先・取引関係等、⑤従業員、⑥お借入れの状況、ここまではありのまま正直に記載していくだけなので特段、問題はありません。ここから先が重要な部分になっていきます。
重要であるのは創業計画書を書くだけではなく、後述しますが日本政策公庫の店舗に行き、面談があります。その際、様々な質問をされますが、これからの内容は特に重視して聞かれ審査に大きく影響のある部分になります。
⑦必要な資金と調達方法、⑧事業の見通し(月平均)ですが、ここの記載は、根拠のしっかりしている内容にしていかなければなりません。
まず⑦必要な資金と調達方法ですが、物件の契約に係る費用については既に決まっていてはっきりしていると思いますが、店舗内の内装や備品についてはその金額の根拠が必要です。第一に意識しておく必要があるのは、日本政策金融公庫の担当者は、新規に開業するために審査を申し込んで来た人の信頼できる『根拠』を求めています。そのためには、正当性のある数字をしっかりと示す必要があります。そのため、内装についてはそれがなぜ必要なのかを踏まえしっかりと業者に見積もりをとっておく必要があります。備品ついても同様で、少しでも多く融資してもらうために多めに計上してしまうと面接の時に突っ込まれてしまい信頼面でマイナスとなってしまうかもしれないので『根拠』を数字でしっかり出しましょう。
また⑧の事業の見通し(月平均)についても売上予想の根拠となるものが必要です。たとえば学習塾の場合ですと地域の人口やその学区の生徒数、またエリア内での通塾対象となる人数とそのうち何%を見込みその数字になる『根拠』が必要です。大通りに面していて視認性がよくチラシを○○○部巻き、ポスティングなどで認知を高めていってその学校の1%を顧客とする、など具体的なものを出す必要があります。ある程度は面接の時に説明し伝えればよいですがそこは相手も融資のプロです。自分の業種のことは不知識だろうとタカをくくっていくと大変なことになります。
この創業計画書を完成させると次は面談の申し込みになります。これは創業計画書を元にその中身や計画性について話していくことになります。もちろん、面談なので人や身なりも見られます。社会人として起業人としてふさわしいかも日本政策金融公庫の審査の対象となってきます。
申込みをし、面談の時間が決まると必要な書類などを用意し持参することとなります。書類については必要なものを予約時に言ってくれますのでその指示通り、持っていけばよいです。
【日本政策金融公庫での審査 面談について】
面談では開業の動機やその場所を選んだ理由について、自分の経歴との関係や創業計画書の中身について、家族構成や子供の通学している学校まであれやこれやと聞かれていきます。チラシをくばるのに○○万円、とかですと当然なぜその金額なのか聞かれます。印刷するのに○○印刷所で○○枚印刷するのに○○万円、折込代として1枚あたりいくらで○○円、など細かく聞かれていきます。バイト募集でもタウンワークに何回、1回あたりいくらなども聞かれました。話は営業の人から聞いていたので答えることができましたが順番が逆になると大変なことになったかもしれません。
【日本政策金融公庫 審査クリアを確実にするために】
結果として私の場合、これらで融資を100%実行していただくことができました。ただ、振り返ってみるとこれは学習塾という業種が仕入れがほとんどなく備品も少ない。
比較的必要なものがはっきりしていて広告代、人件費、内装費用くらいのもので売上見込みもそんなに毎日100人もくるような設定ではないのでやりやすかったですが飲食業や小売店ではとてもじゃないが個人で申し込むのは難しいと思います。
後日、契約した税理士さんに聞くと個人で申込むと日本政策金融公庫の審査担当の人から見て申込者の信頼の保証がないため必要以上に厳しくチェックされることになるとのこと。
税理士さんなどの専門家に頼むと審査担当のところに行く前に、その税理士段階でチェックしているため、その段階である程度完成させてもらえます。不十分な創業計画書や面談での想定外の質問をされることはないから90%以上、審査を通ることができるとのことでした。
経験豊富な専門家がついていればその専門家の信頼で日本政策金融公庫の審査もクリアできるということです。
専門家に頼むと費用がかかりそこは気になるところですが、会社をやめて親にも多少援助もしてもらっていたので、ここで審査に通らず開業そのものが危なくなるリスクを思うと自分で出すのは今思うと危なかったなと思いました。
【まとめ】
以上が、実際に日本政策金融公庫の審査を受けた方の実体験でした。
実際に審査を受けた人の経験は貴重ですね。
今後、日本政策金融公庫の審査を受ける方の参考になればと思います。
税理士、大山俊郎でした。
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