日本政策金融公庫の審査の流れと担当者が見ている4つのポイントとは?【税理士が解説】

税理士、大山俊郎です。

あなたはこれから起業するために日本政策金融公庫から融資を受けたいとお考えではありませんか。
どこの金融機関でも融資を申し込む際に審査がありますが、創業融資は審査が通りにくいという現実があります。日本政策金融公庫にも創業時融資の制度はありますが、審査を通すのは簡単なことではありません。一方で、日本政策金融公庫の審査に関する情報は、あまり知られていないという現実もあります。

そこで今回は、日本政策金融公庫の審査の流れと審査担当者が見ている4つのポイントについて解説していきます。

■日本政策金融公庫の審査はどんな流れになっているのか
これから起業しようという方は、日本政策金融公庫の審査がどういう流れになっているのか気になると思います。審査の流れによっては時間がかかるため、創業準備に影響を与えることもあるでしょう。ここでは、日本政策金融公庫の審査の流れについて解説していきます。

(1)審査の流れ

①事前に相談する
日本政策金融公庫へ融資の申込は、最寄りの支店窓口まで出向いて担当者への相談するところからスタートです。担当者から必要書類や面接日、審査、融資の決定などについて説明があり、不明な点を質問すると親切に教えてくれます。申込書は窓口でもらうか、公式サイトからダウンロードして入手することが可能です。
なお日本政策金融公庫への融資の相談は、商工会議所や商工会の窓口でも対応してくれます。

②窓口で申込をする
融資の申込に必要ンな書類を用意して、窓口で提出するか郵送します。申込者が個人か法人かによって準備する必要書類は異なりますが、窓口で担当者から詳しい説明があるので安心です。もし不明な点があれば、その場で担当者に質問すると親切に教えてくれます。

③面接日の設定
日本政策金融公庫の窓口で融資の申込をしてから数週間経過すると、担当者から連絡がきて面接日を設定します。面接から審査がスタートすると思っておいてください。

④面接
実際に面接を行う担当者は、窓口の担当者とは別です。面接担当者は提出した書類や資料をもとにして、起業する事業の内容や事業の見通しなどについて質問します。面接担当者だけで審査の結果を出すわけではなく、上司が最終的な決定権者です。面接担当者に事業内容等についてわかりやすく説明して、上司にもうまく伝わるようにしましょう。面接は1時間~1時間半ほどで終了します。

⑤審査~融資決定
提出された書類と面接により日本政策金融公庫の審査は行われます。面接担当者と上司である最終決定権者との間で、融資することの妥当性について話し合いが行われ、最終決定されるのです。

(2)審査はどのくらいかかる?
審査にかかる期間は、日本政策金融公庫で融資を受けた経験があるかどうかで変わってきます。

①日本政策金融公庫で融資を受けるのが初めてのケース
日本政策金融公庫の融資を初めて受ける場合は、面接してから審査の結果が出るまで最短で10日ほどです。ただし、月曜日か火曜日に申し込むと融資担当者の対応が早くなり、1週間以内に審査結果が出ることもあります。面接を週末に行っていれば土日を挟むため、少し期間が延びて約2週間ほどです。

②日本政策金融公庫で融資を受けた経験があるケース
これまで日本政策金融公庫で融資を受けた経験があれば、新規の場合と違って審査することが少ないため審査期間は短期です。企業の業績が好調であれば1週間以内、業績が悪ければ2週間以上かかると思っておきましょう。
ただし、前回の借入を完済してから3年以上経過しているとデータがないため、新規の融資と同じくらいかかります。

(3)審査に時間がかかることがある
日本政策金融公庫の審査は場合によっては一般的な審査期間より時間がかかることがあります。以下のような場合が、審査時間の長くなる事例です。
①日本政策金融公庫の融資担当者が多忙だった
②ビジネスモデルが特殊で、理解するのが困難であった
③追加書類を提出し忘れていた
④担保のある融資案件
⑤提出書類の不備

■日本政策金融公庫の審査担当者が見ている4つのポイント
創業前は決算書などの資料がないため、審査担当者は創業計画書をメインに判断します。審査の際に日本政策金融公庫の担当者が見ているのは、以下のようなポイントです。

(1)事業の見通しがどれくらい具体的か
事業の見通しがどれくらい具体的に書かれているかは、大きなポイントです。あいまいで根拠のない売上見込や利益見込が書いてあると、審査担当者を説得することができず審査に通りにくくなります。
売上見込や利益見込などの数字はできるだけ具体性があり、厳しい目であればあるほど経営姿勢に対する信頼を得やすいのです。数字の根拠を示して具体性を高めるほど、創業計画書の通りに実現される可能性が高くなります。その結果、審査担当者は審査を通しやすくなるのです。

(2)商品やサービスのセールスポイントはどこか
「取扱商品・サービス」は記載項目になっていて、審査する上で重要なポイントです。ビジネスでは必ずライバルは存在しますが、その商品・サービスの市場でライバルがどこにいて、自分の商品・サービスのセールスポイントがないと競争に勝てません。ライバルを把握していなかったり自分の商品・サービスのセールスポイントを把握していなかったりすると、審査ではマイナスに評価されます。

(3)必要な資金と調達の方法
「必要な資金」と「調達の方法」が記載項目になっていますが、「必要な資金」では運転資金、「調達の方法」では自己資金を審査担当者は重視しています。

①自己資金
一般の金融機関では保証人なしで融資を受けられませんが、日本政策金融公庫の創業融資では保証人なしで融資を受けられます。もっとも日本政策金融公庫でも保証人をつけることはでき、保証人有の場合には0.1%ほど低い金利です。ただし、保証人をつけるのは簡単なことではないため、ほとんどの場合に保証人をつけません。
経営者が自分でリスクを負って起業するという覚悟を見せるため、自己資金がある程度必要になります。自己資金が少ないと、経営者がリスクを負うというアピールができないため審査に通りにくいのです。

②運転資金
運転資金をシビアに書いていないと、「運転資金の読みが甘い」つまり「計画を立てても達成できない可能性が高い」と判断されます。運転資金については、商品の仕入れ代金や備品、人件費など金額の大きなものしか記入しない人もいますが、実際に起業するといろいろと細かな支出があるものです。設備資金についても記入する必要はありますが、運転資金について細かく記入していると創業計画書に対する信頼度がアップします。

(4)創業計画書だけでなく人の審査もしている
日本政策金融公庫の担当者は創業計画書をメインに審査しますが、創業計画書を通じて起業する人を見ています。どんなに素晴らしい計画書を作成しても、それを実行する人の資質に問題があれば起業は成功しません。「この人なら起業を成功させる」と担当者に思わせると、審査に通る可能性が高いのです。
創業計画書以外では、以下のようなことを担当者は見ています。

①過去の経歴
経営者にこれから起業しようとしている業界で実務経験があったり、実績を出した経験があったりすると、審査に通りやすくなります。融資しても計画通りに返済してくれる可能性が高いと判断されるからです。
日本政策金融公庫の審査では、業界経験がまったくないと創業融資で審査に通るのはなかなか難しくなります。これから起業する業界に精通していて、実績もあることをアピールすると審査に通りやすいのです。

②起業の動機
起業の動機とは、どうして起業しようと思ったのかという理由のことです。自分の過去の経験や前職でチャンスがあると感じた場合には、説得力のある説明ができます。「ただもうかりそうだから」というのでは、日本政策金融公庫の審査担当者は「どうしてあなたがする必要があるのか」という疑問を感じてしまい、審査を通すほどの説得力に欠けるのです。
自分の体験や経験からオリジナルの視点を見つけたことや特別なニーズを発見したことをアピールすると、担当者の印象は良くなり審査に通りやすくなります。

③事業のプレゼン能力
日本政策金融公庫の審査担当者には、創業計画書で将来の返済計画を数字で説明する必要がありますが、それだけを見ているわけではないのです。事業は計画書の通りにうまくいくことは少ないのですが、事業がうまくいかなくてもこの人は最終的にお金を返済してくれるのかどうかという点を見ています。
事業がうまくいかなくても対応できる能力があるか、事業について冷静かつ堅実に分析する能力があるか、などを審査担当者にアピールすることが大切です。

■まとめ
今回は、日本政策金融公庫の審査の流れと担当者が見ている4つのポイントについて解説しました。担当者は創業計画書をメインに審査をしていくため計画書に記入することは大事ですが、創業計画書を通して起業する人を審査しているのです。そのことを忘れずに、創業計画書だけでなく面接のプレゼンにも力を入れることをおすすめします。
 
税理士、大山俊郎でした。

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