起業の失敗例を解説!日本政策金融公庫に返済できない場合、どうなる?【税理士が解説】

税理士、大山俊郎です。

 

起業の際には「日本政策金融公庫」で借り入れをされる方が非常に多いです。

日本政策金融公庫は、実績のない設立したての会社などにも柔軟に融資をしてくれるので、とても便利です。

しかし、思ったように事業がうまくいかず、返済できなくなってしまったら、公庫から取り立てが来てしまうため、適切に対処する必要があります。

 

今回は、起業で失敗する例として、日本政策金融公庫からの借入金を返せなくなる問題や、その場合の正しい対処方法について、解説します。

 

起業の際、日本政策金融公庫で借りて失敗する例とは?

日本政策金融公庫は、起業の際にとても利用しやすい政府系の金融機関です。

金利も安く、審査にも通りやすく、起業の際のさまざまな相談にも乗ってもらえるので、重宝する起業家が多いです。

 

しかし、日本政策金融公庫で借入をしても、失敗することがあります。それは、借りたはいいけれど、返済ができなくなるパターンです。

日本政策金融公庫は政府系なので、無茶な取り立てをすることなどはなく、比較的安心な金融機関です。

しかし、ボランティアではありませんので、返済ができないと、当然取り立てがあります。

起業後思うように収益が上がらず返済を滞納してしまうと、公庫から督促や取り立てを受けて、せっかくの事業が頓挫してしまうのです。

 

起業するときには資金調達が心配なあまり「公庫で借り入れができたら、とりあえず満足」してしまう方がおられますが、その考え方は危険です。

借入は、「ゴール」では無く「スタート」であることを認識すべきです。

 

起業後、日本政策金融公庫へ返済できなくなった失敗の具体例

起業後経営に行き詰まってしまい、日本政策金融公庫に対する返済が滞ってしまったら、どのようなことが起こるのでしょうか?

段階を追って見ていきましょう。

 

以下では、日本政策金融公庫で起業資金を調達したけれど、その後行き詰まって返済できなくなってしまった「山田博さん(仮名 35歳)」の失敗例をご紹介します。

 

確認の電話がかかってきた

山田さんは、新創業融資制度を利用して1000万円借りましたが、思ったように事業が軌道に乗らず、返済が苦しくなりました。

 

公庫に連絡をするのが気まずいので、放っておいたところ、期日を過ぎても入金がないということで、公庫から電話がかかってきました。

ただ、厳しい口調で責められたりすることはなく、まずは状況を確認されて、支払ってくださいと言われました。

山田さんは「支払います」と言って、何とかその場を収めました。

 

督促の郵便が届いた

ところが、約束した通りの支払いはできませんでした。すると、また公庫から電話がかかってきたので、今度は山田さんは、電話に出ませんでした。

すると、郵便で督促状が届きました。督促状には、滞納金額と、それを速やかに支払うように、ということが書いてありました。

 

一括払い請求書が届いた

山田さんは、それでも支払いができないので、督促状も無視して放置してしまいました。

すると、滞納してから数ヶ月が経過した頃、日本政策金融公庫から内容証明郵便で「一括請求書」が送られてきました。

そこには、現在の借入金の残高と遅延損害金の金額が書いてあり、それを全額まとめて支払うように、ということでした。

山田さんは、分割払いでさえ苦しいのに、一括払いができるはずがないと思って、それも無視してしまいました。

 

債権譲渡されてしまった

内容証明郵便を無視していると、しばらくして、日本政策金融公庫から、「〇〇債権回収に債権譲渡しました」という通知書が届きました。

山田さんは驚きましたが、もはやどうしようもないと思って放置していると、今度は〇〇債権回収から、借金と遅延損害金の一括払い請求書が届きました。そこには「支払いをしないと訴訟をして、御社の資産を差し押さえます」と書いてありました。

しかし、山田さんにはそのようなお金を返済することはできないので、放置するしかありませんでした。

 

債権回収業者について

債権回収業者とは、焦げ付いた債権を廉価で譲り受けて、債務者に対して取り立てを行い、債権を回収して利益を上げている業者です。正式に「債権回収業者」として登録された業者のみが債権回収業を行うことができます。

 

一般的に日本政策金融公庫自体は「取り立てが厳しくない金融機関」として知られていますが、債権回収業者は日本政策金融公庫の関連機関ではないので、取り立ては厳しくなります。これまでのように、やんわりと「返済して下さいね」と言われるだけでは済まないので、注意が必要です。

 

裁判をされた

山田さんが債権回収業者からの支払い督促状を無視していると、業者は本当に裁判を起こしてきました。

裁判所から山田さん宛てに呼出状が届き、答弁書を提出するように書いてありましたが、山田さんとしては「一括なんて、支払えません」と言うしかありませんでした。

結局判決が出て、山田さんの経営する会社に対し、借入金と遅延損害金、さらには訴訟費用の一括払い命令が出てしまいました。

 

和解について

今回、山田さんは裁判で判決を受けましたが、実際には裁判において、債権者と「和解」することができます。和解とは、原告(訴えた人)と被告(訴えられた人)が、裁判所の仲介によって話合いをして、裁判を終わらせることです。

判決では、一括払いしか認められませんが、和解なら分割払いが可能なケースも多いので、もし支払いの余地があるのであれば、裁判官に間に入ってもらって和解の話合いを進めるのも良いでしょう。

 

差押えと倒産

山田さんは、裁判所から一括払いの判決を受けましたが、当然支払いができるはずはありません。放置していると、債権回収業者は、山田さんの運営する会社の資産を差し押さえてきました。

少ししかない預貯金、山田さんのためにかけていた生命保険、売掛金まで差し押さえられて、会社の事業継続は到底不可能になり、山田さんは、やむなく会社を倒産させるしかなくなりました。

 

ただ、山田さんの場合、自分や他人が保証人になっていなかったのと、日本政策金融公庫以外で借入がなかったので、破産手続きは比較的スムーズに進みました。

 

このように、日本政策金融公庫からの借入金を返済せずに放置しておくと、多大な不利益がありますし、倒産のリスクも高くなるので、ここまで来る前に対処すべきです。

 

起業で失敗例とならないために|支払いが苦しくなった場合の対処方法

それでは、日本政策金融公庫からの借入金を返済できなくなったとき、山田さんはどのようにしたら良かったのでしょうか?

 

公庫に相談をする

まずは、返済が苦しくなったときに、すぐに公庫に相談をすることが大切です。

できれば、実際に滞納してしまう前に相談をすることです。その方が、公庫の方も柔軟に対応してくれますし、与える印象も良いです。

また、対処方法をともに考えて、滞納やそれ以上の状況悪化を防ぐことが可能となるケースもあります。

 

リスケジュールをする

当初の返済計画のままでは支払いが難しい場合には、リスケジュールできるケースがあります。リスケジュールとは、返済方法の変更のことです。

一般的には、1年程度の間、利息のみの返済としてもらい、その間に経営状態を立て直して、期間の経過後に元本+利息の返済ができるように備えます。

リスケジュールをすると、期間中は利息だけの返済となるので、資金繰りが非常に楽になり、経営状況を改善させやすいです。

 

まずは、日本政策金融公庫にリスケジュールの相談をして、今後の事業内容改善計画書や資金繰り表などを提出しましょう。リスケジュールによって再生できる見込みがあると考えてもらえたら、元本の返済を猶予してもらうことができます。

 

なお、リスケジュールした場合、1年程度の間元本を返済しなくなるので、その分全体的な返済期間が長引きますし、借入金の総返済額は、当初予定より大きくなります。

 

ファクタリングについて

日本政策金融公庫に対する支払いが苦しい場合「ファクタリング」という方法で資金調達することが考えられます。

ファクタリングとは、企業の売掛金を担保として借り入れをする制度です。つまり、有効な売掛金があったら、ファクタリング業者を利用して、借り入れをすることができるのです。専門業者があるので、どうしても支払いが困難な場合、一度相談してみるのも良いでしょう。

ただ、ファクタリングと言っても借入の1種ですから、あまり頼りすぎると危険です。

結局は、日本生活金融公庫だけではなくファクタリングの返済にも追われて、ますます窮地に追い込まれるおそれもあるからです。売掛金を差し押さえられたら、売り上げが入ってこなくなり、かえって資金繰りが悪化する可能性もあります。

 

借り増しについて

どうしても資金繰りが厳しい場合には、ビジネスローンなどで借り入れをすることも考えられます。

ただ、こうしたローンはかなり金利が高いことが多いので、注意が必要です。

すぐに返済できる当てがあるなら「つなぎ」で利用するのはかまいませんが、当てがないのに借りると、雪だるま式に借入金が増えて、首を絞めることになります。

 

債務整理をする

最終的に、どうしても返済ができない場合には、債務整理によって解決するしかありません。

債務整理というと「破産」を思い浮かべるかも知れませんが、企業の債務整理の方法には、私的整理や民事再生などと言った、「企業が生き残るための債務整理手続き」があります。

また、最終的に破産することになったとしても、日本政策金融公庫の創業融資制度の場合、代表者が保証人となっていないことが通例です。そこで、代表者個人は破産せずに済みますし、財産を失うこともありません。

 

どうしても支払いができないなら、追い詰められる前に、早めに弁護士に相談して、債務整理をしてもらうと良いでしょう。

 

税理士、大山俊郎でした。

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