日本政策金融公庫を利用する前にCICのチェックが必要な理由【税理士が解説】

税理士、大山俊郎です。

個人で事業を立ち上げる際には、創業資金の調達に日本政策金融公庫の利用がおすすめです。都市銀行や地方銀行は中小の個人企業への融資には厳しいですし、信用金庫や信用組合の場合も長く出資者としての信頼関係を築く必要があります。

ただし政府が100%出資する日本政策金融公庫への申し込みの前には、指定信用情報機関CICの個人情報を自分で調べておくことが大事です。そこで創業資金を調達するためにはなぜ日本政策金融公庫が加盟するCIC個人情報を確認する必要があるのか、また何を確認すれば良いのかをご紹介します。

日本政策金融公庫がなぜCICで個人情報をチェックするのか

日本政策金融公庫は、民間金融機関ではフォローできない中小企業の支援を目的に融資を行っています。日本では起業家が育つ土壌が不十分と言われますが、その穴を埋める存在というわけです。とはいっても、日本政策金融公庫は税金を使って融資を行うので、貸し出したお金はしっかりと回収しなければなりません。そこで融資を申し込む個人起業家に返済能力があるのかどうかを、様々な面からチェックしています。

まず事業そのものがきちんと収益を生み出せるものなのかチェックします。これは申し込み時に提出する創業計画書や月別収支計画書、資金繰り表や企業概要書で確認しています。これらは借入金をきちんと返済できることをアピールするものなので、ビジネスモデルをしっかりと作り上げておくことが大事です。

事業モデルとしては飲食店が日本政策金融公庫から融資を受けやすいと言われますが、これはすぐに収益を生み出せるからです。それでも融資を受けるためには集客性やコスト管理、設備投資などの費用対効果などをしっかりと資料にまとめて用意しておくことが必要でしょう。

次にチェックされるのは、融資を申し込む起業家自身の人柄などです。責任感を持ってきちんと返済する意欲を持っているかどうかを確認するというわけです。これは担当者と面談を行い、事業計画などに関する質問に答えるという形で確認されます。誠意を持って対応することが大事です。

そしてもうひとつ、日本政策金融公庫では個人情報をチェックします。つまり、これまでのお金の借り入れ状況や返済履歴をチェックするということです。銀行は口座のお金の流れを見ることができますが、日本政策金融公庫にはそのような口座がありません。そこで第三機関の個人情報を利用して、融資申し込み者の社会的信用をチェックするというわけです。このような個人情報は、いくつかの機関に金融機関やクレジット会社から集まります。そのような個人情報のひとつ、CICというところに日本政策金公庫は加盟しています。そこに集まるクレジットローンなどの情報を元にして、社会的信用をチェックするというわけです。

なぜそのような情報を確認するのかというと、過去のローンに関する履歴から様々な情報を得ることができるからです。例えば返済が滞るような過去があったとすれば、金銭面における計画性に問題があると推測できます。あるいは金融機関ではなくノンバンクから借りていると分かれば、相当に資金面で苦しい状況にあったことが分かります。

日本政策金融公庫がチェックするCICにはどのような情報が集まるのか

借り入れや返済に関する個人情報が集まる機関としては、jiccとCIC、JBAがあります。jiccには消費者金融系の信用情報が、CICには銀行や消費者金融、信販会社やクレジットカード会社の情報が、そしてJBAには銀行やクレジットカード会社、他に農協や信用組合、信用金庫などから情報が集まります。これを見ると、CICには一般の個人が多く利用する機関などからの情報が集まることが分かります。住宅ローンやクレジットカードなどは大抵の人が利用しますし、そこで滞納や未払いがあればすぐに分かるというわけです。

日本政策金融公庫はCICにおいてどのような情報を要注意とみなすのか

CICでは銀行やクレジット会社などからお金を借りて、その返済が滞ったり代位弁済されたりすると一定期間その記録が残ります。具体的には滞納は返済全てを終えてから5年間、任意整理も5年間、自己破産は7年間となっています。過去にこのような履歴があると、返済能力を問われるために融資の審査は通りにくくなります。今後も同じようなことを繰り返すのではないかと懸念されるからです。ただしこの期間を過ぎれば、過去の返済に関する事故の記録は抹消されます。滞納が多かったり、あるいはノンバンクなどからの借り入れがあると審査に大きく影響します。

◇日本政策金融公庫に融資を申し込むならCICでの自分の記録をチェックすること

このように日本政策金融公庫では、CICから個人情報をチェックして信用力を確認しています。起業のための創業資金を借りようと思っているのであれば、一度自分の情報を確認してみると良いでしょう。実は日本政策金融公庫では、CICで得た情報について面談では触れることはありません。つまり面談を受ける時点で、過去の返済履歴などを問われなくても安心できないというわけです。これはCICとの契約により、そこで得た情報を公言することは禁止されているからです。そこで自分自身で一度CICの情報を確認しておく必要があります。

方法は簡単で、誰でもすぐに確認することができます。利用しているクレジット会社などで登録している電話番号から問い合わせを行い、受付番号を取得すればパソコンからすぐに見ることができます。もちろん代位弁済や自己破産などを行っていれば、誰でも記憶に残っているでしょう。けれども一度や二度の滞納は忘れているかもしれません。そのような記録が残っていると、融資の審査に影響します。

ここで注意したいのが、携帯電話の料金の滞納です。携帯電話は使用料金なので、借金返済とは関係ないと思う人も少なくありません。けれども携帯端末を分割支払いにしていると、クレジットローンが組まれています。つまり支払いが滞るとローン返済を滞納していると記録されます。また公共料金やNHKの受信料をクレジットカードで代行収納してもらっている場合にも注意が必要です。これらを代行収納してもらえばポイントが付与されるので、利用している人は多いでしょう。単純に銀行口座からの引き落としであれば、CICに記録されることはありません。けれどもクレジットカードを利用しているのであれば、料金の滞納は返済事故として記録されます。さらに税金も一部がクレジットカードで納付できるので、滞納記録がないかどうか自分のクレジットカードの使用状況を確認する必要があります。

日本政策金融公庫はCICの情報をどの程度審査に反映させているのか

ではわずかな滞納であっても、審査が通らないのでしょうか。CICの情報は過去のものと現在のものとが混在します。現在支払いが滞っているローンがあれば当然ながら、審査が通るのは難しいでしょう。けれども滞納してから数年が経過しているとしたら、審査にどの程度影響するのでしょうか。そのような情報も面談では教えてもらえません。そこで、もし過去に滞納の履歴があると分かったならば、現在の返済能力をアピールしましょう。創業資金を借りるとなれば、その返済は事業での収益で行うことになります。つまりその収益性がいかに期待できるものであるかを説明することが大事というわけです。自分のCIC情報を確認しておけば、そのような対策を立てることができます。場合によっては経営コンサルタントなどに相談するのも良いでしょう。

日本政策金融公庫が参考にするCIC情報はあくまでも過去の履歴です。たとえ過去に事故の記録が残っていたとしても、十分な自己資金としっかりとしたビジネスモデルがあれば融資がおりる可能性はゼロではありません。また日本政策金融公庫で融資を受けるためには、ある程度の自己資金が必要になります。例えば新創業融資制度を利用すれば、無担保かつ無保証人で借りることができますが、自己資金も融資額の1割は必要になります。けれどもそこでもっと余裕のある自己資金を用意するなどの準備をしておけば、融資は受けやすくなります。また日本政策金融公庫では実績を積み上げることで、融資限度額を引き上げることができます。申し込みの融資額が少なければ審査も通りやすくなりますし、CIC情報を確認しておけばどの程度の金額に設定すれば良いのか判断できるでしょう。

CIC情報をチェックすれば日本政策金融公庫からの融資も受けやすくなる

日本政策金融公庫はCICで調べた個人情報に関しては言及しません。そこで創業資金を借りる場合には、まず自分のCIC情報を必ず確認してから申し込みのための準備をしておきましょう。その記録内容にもよりますが、しっかりと準備をしておくことで審査が通る可能性はアップします。

税理士、大山俊郎でした。

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